感性ネーミングの3法則

ヒットネーミングとは?

名は体を表す

ラーメンズという芸人コンビがいる。巧みなことば遊びが得意なふたりなのだが、先日、「名は体を表す」という作品で、思わず「なるほど」とうなってしまった。

それは、「ことばの意味って、そのことばを言った感じに似てないか?」という気づきで始まるコントだ。その中に、次のようなセリフがあった。「もしも、マシュマロと煎餅を知らない人に、この二つを見せて、どっちがマシュマロで、どっちがセンベイだと思うかと聞いたら、ほとんどの人が間違わないと思うんだ。マシュマロは(言った感じが)ふわふわしてて、センベイはいかにもごつごつと平べったい感じがするだろう?」

実は、ことばのイメージ=語感は、意味とはまた別に、そのことばの発音の体感によっても生じている。「マシュマロ」と発音するとき、人は、口腔に息を柔らかく溜めて、弾力を確かめるように転がしている。「せんべい」と発音するときは、舌をひらべったく硬く使っている。発音の体感こそが、そのことばを呼ぶ者の脳に共通のイメージを創り出しているのだ。
しかも、この体感は、直感を司る小脳に直接届く。意味よりも早く脳の潜在域を牛耳り、快・不快の判定につながっている。商品名や企業名など、イメージが何より大事なブランドネームにおいては、この語感(発音体感)効果ははかりしれない。
では、ターゲットに「快」を感じさせ、選ばれるネーミングにするにはどうしたら良いのか。そこには押さえておくべき法則が存在する。

3法則図

感じる言葉の第一法則 〜 名と実態が一致すると気持ちいい

語感(発音体感)と、伝えたいコンセプトが一致したとき、人は、本質的な心地よさを感じる。
軽やかなスポンジのケーキには、発音も軽やかな「ショートケーキ」、もっこりとしたケーキには、唇をふっくらと使う「モンブラン」、ごつごつしたケーキには、喉の筋肉を固く使う「ガトーショコラ」。お菓子の一般名称を並べていくだけでも、名と実体が一致することばの賞味期限が長いのがよくわかる。
企業名を例に挙げると、日立<ヒタチ>は、熱い息を感じさせるヒに、口腔を高く上げ、しっかりと舌を使うタチの組合せ。情熱と凛々しさ、確かさを感じさせる。3音とも前方に勢いよく息を飛ばすので、進取の気を表すイメージだ。アシストコピーに使われているInspireも、前方に勢いよく息を飛ばす音節重ね<Ins+Pire>。未来への息吹を感じさせて、ブランドネームの印象をさらに強めている。
同じように温かい息で始まるホンダは、続くンで楽しげに弾んで、ボリューム感のあるダで受ける。温かくて、楽しくて、包容力がある。車生活が家族にもたらす、ある種のイメージを彷彿とさせている。
シャネルは、爽やかなS音と、優しいN音、華やかなL音の組合せで、女性ブランドらしさを感じさせる。
長く愛されるブランドは、実体と響き合うネーミングを持っているものだ。

感じる言葉の第二法則 〜 年齢や性別で気持ちいい語感は違う

赤ちゃんが、生まれて初めて発音する子音は、おっぱいを加えた口腔形で出すM音。続いて、授乳で疲れた唇を弛緩するために出す「バブ」「パプ~」、口唇破裂音のPとBだ。したがって幼児は、この3音を格別心地よく感じる。ミッキー、ミッフィー、アンパンマン、プーさん、バーバパパなど、息の長い幼児向けのキャラクタは、この3音のネーミングが圧倒的に多い。
思春期に入り、「愛と暴力のホルモン」と呼ばれる男性ホルモン・テストステロンが出始めると、男性たちは、重低音を伴う濁音(G,B,D,Z)の力強さを好むようになる。ガンダム、ボルボ、ジャガー、アキバ、牛丼、バーガーキングなどなど、濁音ネームを並べていくと、男子仕様なイメージが匂い立つのではないだろうか。ホンダのZest(ゼスト)は、女性色の強かった軽自動車のカテゴリに、男性仕様の軽として登場したブランド。「ライフ」「マーチ」「パッソ」「ミラ」の中に入れると、ひときわ目立つ男ネームである。
同じ年頃の女性たちは、女性ホルモン・エストロゲンによって、やや身体がだるく感じるため、K、S、R/Lの軽やかな音が心地よい。サンリオ、キキララ、シャネル、すき、きらい、シュークリーム、ショートケーキ、シュンスケ、リョウヘイなどなど、SKL音を並べていくと、女子のおしゃべりが聞えてくるかのようだ。
そんな女の子たちも、30代に入ると、JやYなど、筋肉を弛緩させて出す癒し系の音も好むようになる。大塚製薬のSoyJoy<ソイジョイ>は、口腔表面をソフトに撫でる息の風ソと、舌の優しい振動音ジョの癒し効果が印象的なネーミングだ。30代の働く女性をターゲットにした、身体に優しい携帯食のネーミングには、まさにうってつけの名前である。
商品のターゲットゾーンが狭い場合には、その年齢性別の人たちが日頃好んでいる音韻を使うことも大事なことである。

感じる言葉の第三法則 〜 時代によって気持ちいい音は違う

2000年代は、「癒し」「愛」「魔法」「スイート」「グラマラス」「モテ」など、甘くて優しいことばが多く使われていた。
2011年に入ってから、ことばは、ややシャープさを見せ始めた。女性誌には「譲れない」「本格派」「凛々しい」「女子力」などしっかりしたことばが目立ち始め、ドラマでは「まっすぐな男」「ハガネの女」なども。男性市場でも、「世界一」「世界初」など、突出したキャッチコピーが売り上げにつながるようになってきている。
ここから数年は、より凛々しく市場をリードすることばや語感を選ぶといいはずである。

「発音して気持ちいい」は、聞いても、見ても、気持ちいい

ヒトは、生まれつき、ミラーニューロンと呼ばれる脳細胞によって、他者の発音体感を鏡に映すように脳裏に写し取り、自らのそれのように感じとる能力がある。このため、発音して気持ちいいことばは、聞いても気持ちいいことばなのである。
さらに、8歳の言語脳完成期を超えると、文字面を見ただけでも、聞いたときと同じ脳細胞が活性化するため、「発音して気持ちいい」は、「見ても気持ちいい」と同義と言える。
つまり、ことばの発音体感は、ことばの気持ちよさを全方位に担保しており、やはり無視するわけにはいかない。

その実体(商品、サービス、会社)が、お客様にあげたい「心地よさの種類」は何なのか。お客様は、今、何を心地よいと感じているのか。ネーミングの基本は、その自覚から始まる。その心地よさを、発音の体感が訴求したとき、長く生き残る名まえが生まれることになる。

感性とは

それは、脳の潜在域にふと浮かぶ「脳の気分」。
脳神経細胞=ニューロンの特性や、ホルモンバランスが、脳に「複雑系の事象に好感を抱き、共感を好む」アナログ気分や「合理的な事象に好感を抱き、競争を好む」デジタル気分を作り出します。

感性の豊かな人は誰?

「脳の気分」を感知し、出力することができる人。
すなわち、
自分の「脳の気分」を感知し、アートや音楽、ことば、演技として出力できる人。
他者の「脳の気分」を感知し、サービスに生かすことができる人。
市場の「脳の気分」を感知し、デザインや開発、広報に生かすことのできる人。

感性は、鍛えるもの?

感性とは、精神論ではありません。
脳機能論によって、特定の時期の、特定のターゲット市場の気分をあぶり出し、その気分に適合する商品やサービスを策定することができるのです。
感性は、鍛える必要はありません。
感性の仕組みを知れば、誰にでも感性がわかります。
感性分析の手法を使えば、「がんばって考えなくても」感性を数値で比較検討することも可能なのです。

感性は、クールな道具!

脳科学が進化を遂げつつある21世紀。
感性は、「鍛える才能」から、「クールな道具」に変わったのです。