感性ネーミング Vol.1

売れる芸人は「し」を持っている

 3月9日に配信されたFRIDAY DIGITALに、興味深い記事が掲載されていた。題して〝霜降り、宮下草薙…第7世代にも当てはまる松本人志「売れる法則」〟。
 ダウンタウンの松本氏が、かつて『松紳』という番組(日本テレビ系、‘00年から‘06年に放送)で、売れている芸人には、名前やコンビ名に「し」がついていると発言した。「島田紳助、明石家さんま、ビートたけし、横山やすし、西川きよし、桂三枝、松本人志、浜田雅功、ほらみんな“し”がついているでしょ?」
 FRIDAYの記者も、確かにこれまでに売れた芸人を挙げてみても「し」がついていることが非常に多いことがわかる、として、下記の名前を列挙している。
 志村けん、有吉弘行、東野幸治、岡村隆史、内村光良、石橋貴明、木梨憲武、田村淳、ケンドーコバヤシ、設楽統、徳井義実、富澤たけし、若林正恭、春日俊彰。コンビ名では爆笑問題、雨上がり決死隊、くりぃむしちゅー、アンジャッシュ……
 この記事は、第7世代の芸人名にも、この法則が当てはまるとし(霜降り明星、宮下草薙、四千頭身、個人名ではガンバレルーヤ・よしこ)、さらに現M-1チャンピオンの「ミルクボーイ」には、駒場孝(こまばたかし)・内海崇(うつみたかし)と二人共に「し」がついていることを指摘している。
 その上で、次のように中盤を締めくくっている。
 ── なぜ「し」がつくといいのか、この説の理由などは全く分からないし、オカルト的要素を含んでいるが、実際に売れている芸人には高確率で当てはまっているようだ。

 さて、感性ネーミングの分析法《サブリミナル・インプレッション導出法》を使えば、この謎が解ける。けっして、オカルトではないのがわかる。
 この分析法では、脳が感じる語感とは、「口腔周辺で起こる物理現象を、小脳が受け止めてイメージに変えたもの」と定義している。その視点で、シ(SH)について、分析してみよう。

 シSHという音は、霧状に広がるもの(転じて水や光の放射)を感じさせる。
 息を前歯にこすりつけて、四方八方に飛ばすため、霧のように息が放射されるからである。sunshine(サンシャイン=太陽の輝き)も、shower(シャワー)も、この音を使っている。
 また、脳が「音を出そう」と思ってから、音が発言するまでの時間が短く、声帯がほとんど振動しないので、軽やかだ。スピード感があり、軽やかで、光を感じさせる…それがSHが脳が届けるイメージである。
 そう考えると、「新幹線ひかり」とは、本当によくできたネーミングであった。ネーミングしに燦然と輝く、トップネーミング。今からでも、ネーミング大賞を差し上げたいくらいだ。
 輝きを感じさせるため、シャネル、資生堂、コーセーなど、化粧品ブランドに多く使われている。

 SHの音で呼ばれる者は、スピード感があり、軽やかで、華があり、「後腐れのない感じ」がする。シュンスケと呼ばれたら、俊敏に生きざるを得ない。もっさりした、運動音痴のシュンスケは、女の子たちが許さない(微笑)
 実際、シュンスケ、ショウヘイ、ダルビッシュなど、アスリートスターに似合う名前でもある。
 お笑い芸人にとっても、この音の効果は大きいのではないだろうか。スピード感があって、ギリギリのあくどさも「軽やかな、後腐れない」イメージに包める。しかも、華がある。

 ちなみに、ジJは、潤いの音。
 ジーと長音で発音すると、舌のわきに唾がたまるのがわかるはずだ。さらに、舌に伝わる微細な振動が、甘いものを口に含んだ感じを誘う。潤いと甘さをかんじさせるのがJの音の特徴といえる。ジュースや果汁は、まさに、この名で呼ぶしかないのである。
 ジの音で呼ばれる人を、ひとは甘やかしてしまいがち。「タケシ」と呼べば、きついことの一つも言ってやりたくなるが、「ジュンくん」と呼ぶと、ちょっと甘やかしたくなる。これもまた、芸能人には美味しい名前なのでは?
 高田純二、今田耕司、往年の芸人さんでは坂上二郎…Jの芸人さんには甘えんぼ感が漂う気がする。
 そうそう、アニメ「ルパン三世」のカワイイ悪女、峰不二子は、フジコだから、ちょっとスイートな印象が残るのではないだろうか。ルパンのお宝を根こそぎ持っていくのが、クールなイメージのケイコや、凛としたイメージのレイだったら、ちょっと怖いかもしれない。
 こういう名前の秘密は、商品名やキャッチコピーにこそ活かされるべきである。あなたの大事な商品名は、どんな「秘密」を持っているのだろうか。あるいは、新しいキャッチコピーに、どんな秘密を仕込みたいのかしら?

日本ネーミング協会報「ね組通信3月号より抜粋